研究開発

活動実績

研究開発活動トピックス

自動車の環境規制強化(=燃費改善)に対応

低燃費タイヤ用 溶液重合SBR(SSBR)

高度なゴム設計技術による高いグリップ力と低い転がり抵抗の両立

低燃費タイヤのトレッドの原材料として欠かせない素材であり、需要が拡大しています。
タイヤトレッドは、唯一路面と設置するタイヤ部材で、ブレーキ性能(グリップ力)や低燃費性能(転がり抵抗)への寄与が大きい部材です。
低燃費・高性能なタイヤを実現するためには、高いグリップ力と低い転がり抵抗(転がりやすくする性能)の2つの相反する性能を両立させる必要があり、製造に高度な技術力が必要です。

ENEOSマテリアルのSSBRは、加工性、低燃費特性に優れ、低燃費タイヤの原材料として国内外で高い評価を受けています。

EV(電気自動車)の性能向上に貢献

自動車向け電池用バインダー/TRD®

高度な重合・粒子制御技術による高い接着性と耐久性の実現

EVやスマートフォンなどに用いられるリチウムイオン電池の負極用バインダー(接着剤)として使用され、高い成長が見込まれます。
電池の高容量化にあわせ、バインダーにもより高い接着性・耐久性・安全性などが求められており、それを実現するために高度な技術力が求められます。

電気自動車やスマートフォン等に不要不可欠なリチウムイオン二次電池の電極構造を維持する役目を担い、電池の高容量化・高電圧化に貢献しています。

サーキュラーエコノミーの実現に貢献

リサイクル可能なタイヤ材料開発

新しい架橋システムによる高い耐久性とリサイクル性の両立

ゴムをタイヤとして使用するためには架橋が必要であり、架橋しないと耐摩耗性を満たすことができません。
しかしながら、一旦架橋したゴムの架橋を開裂させることは難しく、リサイクル困難です。そのため、現在は古タイヤの半分以上がマテリアルリサイクル(新たな製品の原料として再利用)されずに、サーマルリサイクル(廃棄物として焼却した際の熱を回収して再利用)されています。
タイヤからタイヤにリサイクルするためには、架橋による物性発現とリサイクル性の高度な両立が求められます。
当社では新しい架橋システムによるリサイクル可能なタイヤ材料開発に取り組んでいます。

石油化学分野で長年培った技術を活かして様々な独自性の高い素材を開発

有機合成技術

オレフィンの反応制御技術・ノウハウを活かした新規素材を開発

自動車部品に多く用いられる、耐候性、耐熱性の高いEPDMゴムには、その第三成分としてENB(5-エチリデン-2-ノルボルネン)が使用されています。
当社独自の製造技術を採用したプロセスは、日米合計で年産6.2万トンの生産能力を有し、世界シェアはNo.1です。
当社はENB製造技術の開発を通じて、オレフィンの反応制御技術・ノウハウを培ってきました。
その技術をベースとして、THI-DEやTCPDなど、脂環式構造に由来する透明性、高反応性、高耐熱性といった特徴を有する新規素材の開発に取り組んできました。今後も当社の強みを活かした素材の開発を進めていきます。

高耐熱樹脂配合技術

自社技術の組合せにより、新規熱硬化性樹脂を開発

当社では、独自の有機合成技術で得られる脂環式エポキシドと樹脂配合技術を融合させた「高耐熱新規熱硬化性樹脂」を開発しました。
開発した熱硬化性樹脂は250℃を超える高いガラス転移温度を有し、一般的なカチオン硬化フェノール樹脂よりも高い耐熱性を有しています。
また低粘度であるため、フィラーを高充填することが可能となり、液状コンポジット、固体コンポジットの両方で広い温度域で低線膨張率を達成可能です。この高耐熱性、低粘度、低熱膨張率を活かし、今後EV用途などでますます需要が伸びていくと予想されている半導体のモールド樹脂(封止材)用途などに幅広く適用できることを期待しています。

半導体の内部構造

液晶ポリマー設計技術

溶融成形フィルム
フィラー用パウダー

独自の分子設計技術により、超低誘電正接の新規素材を開発

液晶ポリマー(LCP)は耐熱性、精密成形性、寸法安定性、機械特性に優れたスーパーエンジニアリングプラスチックです。これらの特性により、電子基板用のコネクタ、スマートフォンのカメラモジュールなどの原料として使用されています。
当社では、耐熱性、フィルム成形性と世界最高レベルの低誘電正接を兼ね備えた樹脂や、フィラーとしての利用に適した微小粒径樹脂など、様々な新規LCP樹脂の開発に取り組んでいます。これらの樹脂は第5世代移動通信システム(5G)や次世代自動車の本格普及に向けて、フレキシブル回路基板やミリ波レーダー用基板などへの展開が期待されています。

受賞歴

受賞年度 学会名 賞名 件名
1975年 (社)日本化学会
(社)日本ゴム協会
オーエンスレーガー賞 高分子レオロジーのゴム加工技術研究への応用
1988年 (社)日本ゴム協会 日本ゴム協会賞 スズカップリング溶液重合スチレンブタジエンゴムの開発
1991年 (社)日本レオロジー学会 日本レオロジー学会賞 レオロジーの高分子工業への応用
1995年 IISRP(国際合成ゴム生産者協会) Technical Award 高分子レオロジーのゴム工業への応用
1998年 (社)日本ゴム協会 日本ゴム協会賞 新規な樹脂改質水添ポリマーの開発
2010年 IISRP(国際合成ゴム生産者協会) Technical Award NBR等の特殊ゴム、および樹脂改質用水添ポリマーの開発を含む「ゴムの科学と技術の発展」への貢献
  • 1997年以前は日本合成ゴム株式会社として、1997年~2021年はJSR株式会社としての受賞となります。

主な研究実績

発表年 タイトル 掲載先
2023年 リチウムイオン電池の高性能化に向けたバインダーの開発状況 ポリマーTECH Vol.18
2023年 Structural Changes of Aggregated Filler Particles in Elongated Rubbers through Two-Dimensional Pattern Reverse Monte Carlo Modeling Macromolecules, 2023, 56(12), 4457-4467.
2022年 高強度・高耐久性・高耐摩耗性を示す水添SBRの開発 日本ゴム協会誌 2023年96巻1号17-20
2022年 マルチネットワークエラストマーの構造解析:水素結合架橋エラストマーとの比較 日本ゴム協会誌 2022年95巻7号199-206
2022年 Structure of Multinetwork Elastomer: Comparison with Hydrogen Bond Crosslinking Elastomer ACS Omega 2022, 7, 42, 37520-37531
2021年 機能性合成ゴム材料におけるインフォマティクス研究 日本ゴム協会誌 2022年95巻2号40-46
2021年 Surface coating of a LiNixCoyAl1−x−yO2 (x > 0.85) cathode with Li3PO4 for applying a water-based hybrid polymer binder during Li-ion battery preparation RSC Advances, 2021, 11, 37150–37161.
2021年 Multinetwork Elastomer Using Covalent Bond, Hydrogen Bond, and Clay Plane Bond ACS Omega 2021, 6, 31168−31176
2020年 高機能オレフィン系熱可塑性エラストマーJSR EXCELINK® のご紹介 日本ゴム協会誌 2020年93巻8号264-268
2019年 神奈川大学新型電池オープンラボにおける電池開発 第2回 リチウムイオン二次電池用正極の作製における水系バインダーの適用 工業材料 Engineering materials 68 (1), 82-87, 2020-01.
2019年 結晶性を有するプロピレン-ブタジエン交互共重合体 日本ゴム協会誌 2019年92巻12号435-439
2019年 リチウムイオン電池の高性能化を実現する水系SBRエマルション材料の最新技術 日本ゴム協会誌 2019年92巻11号416-421
2019年 末端変性ポリマーを用いたシリカ分散性の制御 高分子 2019年68巻11号609-439
2019年 Morphological study of blend thin films of poly(3-hexylthiophene)-block-polyisobutylene-block-poly(3-hexylthiophene):poly(3-hexylthiophene) and their application to photovoltaics Journal of Photopolymer Science and Technology 2019, 32(5), 741-746
2019年 Synthesis and Deformable Hierarchical Nanostructure of Intrinsically Stretchable ABA Triblock Copolymer Comprised of Poly(3-hexylthiophene) and Polyisobutylene Segments ACS App. Polym. Mat. 2019, 1(3), 315.
  • 2021年以前はJSR株式会社として、2023年以前はENEOS株式会社としての研究実績を含みます。